"孫権と呂蒙、周泰の記憶：
孫呉の将には一つの習いがある。
酒宴に招かれた際、必ず一つの問いを
投げるのだ。主君は同席するのか、と。
「はっはっは、呂蒙、飲んでいるか？
酒が足りにゃいのではないか？」
「足りにゃい…いや、もう有分に」
「んー?？遠慮はいかんぞ！」
目が据わった主にすごまれては、
断るすべはない。
助けを求めて周囲を見回すも
いつの間にか諸将は姿を消していた。
（……俺としたことが機を見誤ったか）
ふと、末席に目をやると、一人静かに
益を傾ける偉丈夫の姿がある。
(周泰、援軍を……！)
哀願の視線には、しかし、微かな領きが
返ってきただけだった。
無口な将は目を閉じ、いっそう気配を殺したように見えた。
(お、お前……っ！)
「ん? 呂蒙、以外はどこへ……？
まあ、いい。今夜は離さんと」
その夜、孫呉が誇る知勇兼備の将は、
酒の大河に沈んだ……。

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